利回り10%超の正体:カバードコール型ETFを調べた(QYLD、XYLD、JEPI、JEPQ)

前回は、企業の配当が原資の「配当系」ETFを調べました。今回はその対極にある、カバードコール型です。利回りは10%を超えるものが並びます。でも、分配金の中身は企業の配当ではありません。ここを取り違えると、高配当ETFの見え方が全部ずれてしまうので、仕組みから書きます。

カバードコールとは何をしているのか

保有している株について、「将来、決めた価格より上がったら、その価格で売ります」という権利(コールオプション)を他人に売る取引です。売った側は、権利の代金(プレミアム)を先に受け取ります。

株は持ったまま、値上がりの天井を売って現金に変える。だから、株価が横ばいでもプレミアム分だけ収入が入ります。代わりに、大きく上がったときの利益は途中で頭打ちになります。下がるときは、プレミアム分を除いてほぼそのまま下がります。守ってくれる仕組みではありません。

この戦略をETFにしたのが、QYLDやXYLD(Global X)、JEPIやJEPQ(J.P. Morgan)です。ただし作りは2つの流派に分かれます。

Global X系:機械的に全部売る

QYLDは、ナスダック100の株を持ち、その指数のコールを毎月、保有のほぼ全量に対して売ります。XYLDは同じことをS&P500でやる版です。指数連動で、ルールは単純明快。経費率はどちらも年0.60%。

QYLDの数字を見ると、この仕組みの性格がよく出ています。

  • 分配率は約12%(公式ファクトシートで2026年8月時点の過去12か月分配率12.26%)
  • 一方、30日SEC利回りは0.02%(同)
  • 価格は設定時(2013年12月)の25.54ドルから、2026年10月には18.09ドルまで下がっている
  • 年間の分配額も、1株あたり2021年の2.85ドルから2025年は2.04ドルへ減ってきている

SEC利回りというのは「配当や利息などの純粋な投資収益」で計算する指標で、オプションプレミアムはここに入りません。つまりQYLDの場合、公式の稼ぎベースの利回りはほぼゼロで、12%という分配の実態は、プレミアムと元本の払い戻しの組み合わせだということです。

実際、Global Xが公表する分配原資の通知(19a-1)では、2026年9月支払い分のうち純投資収益は1.24%で、残りの約98.8%が元本払戻し(ROC)と推定されています。月によっては大半が元本の払い戻し。分配は出続けているけれど、基準価額は少しずつ削れていく。それが価格の長期推移(25.54ドル→18.09ドル)にも表れています。

XYLDは原資産がS&P500な分だけ穏やかで、価格は13年間で40.45ドル→41.30ドルとほぼ横ばい。利回りは過去12か月で約11%(第三者集計、2026年10月時点)です。

J.P. Morgan系:作りが違う

JEPIとJEPQはアクティブ運用で、発想が違います。株は運用者が選んだ低ボラティリティ寄りのポートフォリオを持ち、オプションは「株式リンク債(ELN)」という仕組みを通じて、株価より少し上の価格のコールを売ります。全量を機械的に売るわけではないので、上昇の一部は取り込めます。経費率も年0.35%とGlobal X系より低めです。

数字も性格が違います(いずれも公式ファクトシート、2026年9月30日時点)。

  • JEPI:30日SEC利回り7.45%、過去12か月の分配利回り8.04%。SEC利回りがこれだけあるのは、ELNからの受け取りが投資収益として計上される構造のためで、QYLDの0.02%と単純には比べられません
  • JEPQ:SEC利回り・過去12か月とも11.56%。ナスダック100中心なのでJEPIより攻めの形です
  • ただし、設定来のトータルリターンは指数に劣ります。JEPIは年率10.81%に対してS&P500は17.72%。JEPQは年率16.89%に対してナスダック100は22.03%

値動きの荒さ(ベータ)はJEPIで0.42と指数の半分以下。下げにくく、上げにくい。その代わりに毎月の分配が出る、という交換条件がはっきりした商品です。

QYLD XYLD JEPI JEPQ
運用会社 Global X Global X J.P. Morgan J.P. Morgan
形 指数連動 指数連動 アクティブ アクティブ
経費率 0.60% 0.60% 0.35% 0.35%
分配の目安 約12% 約11% 約8% 約11.6%
SEC利回り 0.02% 未確認 7.45% 11.56%

※利回りは時点・定義がファンドごとに異なります(2026年8〜10月の公式資料・第三者集計)。分配は全て毎月です。

日本から買う場合の注意

QYLD、XYLD、RYLD、JEPI、JEPQの5本について、SBI証券や楽天証券で買えるか、新NISAの成長投資枠の対象かどうかは、今回の調査では銘柄ごとに確認が取れませんでした。証券会社ごとに取扱いや対象指定が違うので、買う前に各社の銘柄ページで必ず確認してください。ここは断定せずにおきます。

税金の枠組みは配当系と同じで、分配金には米国で10%が源泉徴収され(NISAでも戻りません)、課税口座では日本で20.315%がかかります。なお、米国で「元本払戻し」と分類される部分も、日本の課税の扱いがそのまま連動するわけではないと一般に理解されています。米国の通知書の内訳をそのまま日本の手取り計算に使うのは危ない、という点だけは押さえておきたいところです。

調べた末の、今の判断

毎月、給料のように分配が入ってくる形に気持ちが引かれるのはよく分かります。私も配当を月ごとに記録している側です。

ただ、カバードコール型の「利回り12%」は、企業が稼いで配る12%とは別物です。受け取っている現金の一部は、自分の元本が姿を変えたものだったり、将来の値上がりを先に売った代金だったりします。それを理解したうえで「値上がり益を捨てて、毎月の現金と穏やかな値動きを買う」と決めて持つなら、一つの道具だと思います。逆に、利回りの数字だけを見て配当系と同じ棚に置くと、基準価額が目減りしていく理由が分からなくなります。

高配当という言葉は同じでも、原資が何かで中身はまるで違う。前回の配当系と合わせて、分配金を見るときは「これは何のお金か」から確認する癖を付けたいと、あらためて思いました。

※この記事は個人の調査記録です。特定の商品の購入を勧めるものではありません。数字は2026年10月24日時点の調査に基づきます。証券会社での個別銘柄の取扱いとNISA対象可否は未確認のため、本文では断定を避けています。

主な出典:Global X公式ファンドページ・分配原資通知(19a-1)、J.P. Morgan公式ファクトシート(JEPI/JEPQ、2026年9月30日時点)、SBI証券公式情報ほか(いずれも2026年10月24日に確認)。